Gelsomina




(1954 イタリア)

暴力的で専制的な亭主ザンパノに、けなげに従うジェルソミーナが意地らしい。
家族のために笑顔で手を振り、鞭で打たれながら芸を覚え、自分の存在価値を見出し、ザンパノを支えようとする。
ジェルソミーナが自分に目覚めてゆく姿はあまりに純粋で一途です。
ザンパノは体に巻いた鎖を胸の筋肉で引きちぎる大道芸で暮らす旅芸人。
ジェルソミーナをことごとく無視し、彼女の目の前でゆきずりの女を口説く。
世話になった教会で銀を盗む。優しい青年を殴り殺し、気が違ったジェルソミーナを置き去りにしてしまう。
ザンパノはその非情さや悪業のため、大切なものを失ってしまう。
こんなどうしようもない男でも愛してくれたジェルソミーナさえ、大切な存在だとも気づかずに。
ただ、後半のザンパノは、泣いて怯えるジェルソミーナに少し優しい。
置き去りにする時、トランペットを置いていくのは、彼の精いっぱいの詫びなのかもしれない。
終盤、鎖の芸にも老いが感じられ、そこに、かつての堅固な肉体や精神はありません。
酔いつぶれ、友達なんかいらん、と暴れ、誰も自分に寄せ付けない。
浜辺で、夜空を見上げて、あまりの孤独に驚いたように涙を流す。
淋しさに打ちひしがれるラストシーンはたまらなく哀しくなります。
老いて弱った彼を、自業自得だ、と軽蔑する事ができないのです。
その人生を思うと、哀しい。


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