奥の細道紀行


母校の恩師、S先生の古典セミナーに参加して半年あまり、奥の細道の講義は聴く度に面白くなっていく。

この度、セミナーのメンバーで、芭蕉翁の辿った道を旅行することになりました。

先生と幹事の I さんと T さんが企画して下さり、山中温泉と金沢へ1泊2日の旅です。

季節は春たけなわの2004年4月、参加者は8名となりました。


 
4月11日 山中温泉

JR大阪駅の噴水の(噴水はなかった)ところで am9:00に集合。 9:42 発のサンダーバードに乗車しました。

窓からの景色は桜が満開で菜の花の黄色が快晴の空の色に良くあっている。

11:50 加賀温泉駅で下車。大型タクシーで[全昌寺]に向かいました。




全昌寺


山中温泉 和泉屋の菩提寺で芭蕉はここに泊まりました。曾良が山中温泉で芭蕉と別れたのは体調を崩したため

でありました。曽良は一足先に立ち寄ったこのお寺で

「終夜秋風聞くや裏の山」 という句を残しました。その句碑がこのお寺にありました。




曾良の句碑

「庭掃いていでばや寺に散る柳」

と芭蕉が詠んだ、その柳から5代目の柳もありました。





斉藤別当実盛は初め源義朝に仕え,平冶の乱に敗れて後、平宗盛に仕えました。

篠原の合戦では平維盛に従って源義仲の軍と戦いました。73歳だった実盛は老いを隠そうと髪を黒く染めて奮

戦し討ち死。黒髪を不思議に思った義仲が、近くの池でその首を洗わせると果たせるかな白髪が現れた。

義仲はそれを見て号泣した、という。


その故事が謡曲「実盛」となり、それを念頭において芭蕉は

「むざんやな兜の下のきりぎりす」の句を詠みました。

篠原古戦場の近くにその「首洗い」の池がありました。



首洗いの池


現在の岩窟内の本殿をはじめ、社殿、唐門、三重塔など芭蕉が見たものとほぼ同じもの。

全山が灰白色の凝灰岩からなる奇岩遊仙境は印象的でした。ここで

「石山の石より白し秋の風」と芭蕉は秋風を表現しました。






鶴仙境


鶴仙境遊歩道を散策。黒谷橋を渡り、渓谷を下りたところに芭蕉堂があり、風流なたたずまいの小堂の中に陶製

の芭蕉像が祀られてありました。渓谷には薄紫の可愛いすみれがいっぱい咲いていました。


菊の湯


天平造りの優雅な建物の共同浴場で、風格があります。この地を訪れた芭蕉は

山中や菊は手折らぬ湯の匂い」と詠んでいる。

この句の中の菊というのは

昔、中国の周の慈童が菊の露を飲んで700年の長寿を保った、という伝説があって


効能顕著といわれるこの山中温泉に入れば、長寿の霊薬といわれる菊を手折る必要はないね・

という意味だそうです。

芭蕉は山中温泉で逗留した和泉屋の主人 桃妖にゴマをすってこのような句を作った、と思う。芭蕉はここに八日間

も滞在しています。

共同浴場の近くに「芭蕉逗留和泉屋」の跡に行きました。

湯の名残今宵は肌のさむからん」の芭蕉の句

を刻した石碑が立っていました。字は磨耗していて読むのが困難だったけれど、椿の花がきれいだった。





このあと、わたし達はホテル「よしのや依緑園」に帰り、夕食。同窓生8人の宴は盛り上がりました。このホテルの若

おかみは元ミスインターナショナルだったそうで、背の高い美人でした。

夜、9時頃、ホテルの温泉「菊の湯」に入る。

無色透明のカルシウム、ナトリウム泉でかなり、熱い。私は舌も猫舌だけど、身体も猫舌で熱いのに弱い。

すぐに出てきたら先生も「熱いお湯やったねえ。のぼせてしまったわ」と言ってられた。

4月12日 金沢

9:55発 サンダーバード富山行きで金沢に着きました。「奥の細道」では芭蕉は元禄2年3月27日に出発して、こ

の金沢に7月15日に来ています。

犀川大橋を渡って犀川沿いに歩くと雨宝寺がありました。寺町台寺院郡の成学寺に行きました。

境内には俳人 堀麦水の建てた

  「あかあかと日はつれなくも秋の風」  芭蕉

の句碑がありました。


願念寺


金沢は七月中の五日なり。ここに、大坂より通ふ商人何処という者あり。それが旅宿をともにす。一笑という者は、

この道に好ける名のほのぼの聞こえて、世に知る人もはべりしに、去年の冬早世したりとてその兄追善を催すに

「塚も動けわが泣く声は秋の風」

と「奥の細道」で書いている一笑の墓はこの願念寺にあります。





境内には小杉家の墓と一笑塚がありました。一笑辞世の句

「心から雪うつくしや西の雲」が刻まれていました。カリンの木が塚の横に植えてあり、後ろ側にそっと

山吹の黄色い花がさいていました。みんなはこの塚の前で手を合わせました。

わたし達の一番きたかったところがこの願念寺でありましたが、近所のお茶屋さんの話では、もう少し奥に行った

ところに、忍者で有名な妙立寺があり、最近ではそこを訪れる人の方が多いそうだ。
本長寺


木瓜、雪柳,沈丁花などが満開。

「春もややけしき調う月と梅」の芭蕉の句碑が立っていた。

長久寺


「秋ふかし手ごとにむけや瓜なすび」

の芭蕉の句碑があり、保存樹の銀木犀が影をつくっていました。向こうの方に真っ白な医王山が見えた。


予定のコースを全部、踏破して、15:01発サンダーバード32号で、全員 無事大阪に帰ってきました。

姥桜咲くや老後の思い出   宗房(芭蕉)