月下の歩哨線

田端義男

一、
どこでつくのか鐘の音(ね)が
夕餉(ゆうげ)の煙(けむ)と共に鳴る
遠い故郷が偲(しの)ばれて
汲(く)めども尽きぬ思い出が
護る歩哨の胸をつく


二、
夕べの月も清かった
帰って来てよ父さんと
後追いかけて見送った
可愛いあの子の日の丸が
今日も万歳云うようだ


三、
空を仰げば雲もなく
心を張りて立つ歩哨
煌(きらめ)く銃の頼もしさ
甘い夜風が頬なでて
月に浮かぶは父母の顔



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